このカメラについて
ZEのページでも書いていますが、マミヤという会社は35mm一眼レフのマウントを頻繁に変えてきました。資産継承が大きな問題となるほど市場占有率が高くなかったため、機能優先でマウント変更を行なったのだと思いますが、これがユーザーの不信感を招いたという側面もあるでしょう。
さて、そのマミヤの35mm一眼レフ最後のマウントとなったミラクルマウントですが、このマウントを採用したボディの最後から2番目の製品がこのカメラのようです。最後になった機種はZMというカメラで、デザインがかなり進んで(?)いましたが、機能的にはZE-Xを超えてはいないようですので、このZE-Xが最上位機種ということになるのではないかと思います。
しかし、最廉価版のZEと同様のプラスティック外装のため、フラッグシップと呼ぶのは気が引けます。
さて、手元には最廉価版のZEがありますので、この両者の機能の差を表にして比較してみましょう。細かい違いもいろいろあると思いますが、ここでは操作してみてわかる違いを主に書いてみたいと思います。
項目 |
ZE |
ZE-X |
露出制御 |
絞り優先AE/マニュアルはBのみ可 |
絞り優先AE/シャッター速度優先AE/プログラムAE/マニュアル選択可
クロスオーバーシステムON/OFF選択可 |
シャッター速度 |
1/1000〜1,B |
1/1000〜22(AE時、ファインダー内表示は16まで)、1/1000〜8,B(マニュアル時) |
露出補正 |
±2段(1段ステップ)、0でロック有り |
±3段(1/3段ステップ)、0でロック有り |
多重露光機能 |
なし |
有り |
アイピースシャッター |
なし |
有り |
ファインダー内表示 |
LEDによるシャッター速度表示のみ |
7セグメントLEDによるシャッター速度と絞りの表示、露出補正表示 |
セルフタイマー |
機械式(約10秒) |
電子式(2/6/10秒選択可) |
AEロック |
AEロックモードで常時AEロック |
シャッターボタン半押し中AEメモリーボタン押下でロック |
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「MODE」の上にあるスイッチをスライドさせると、クロスオーバー機能の解除となる。 |
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マニュアル時8秒までの長時間露出が可能。中間は使えない。巻き上げレバー下にあるのが多重露光用スイッチ。 |
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絞り優先時のファインダー内表示。速度と絞り値が表示される。 |
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プログラムモードにすると、Pだけしか表示されない。 |
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しかし、速度が1/30以下になる時は速度が表示されるようになる(ワイド〜60mmまでの時)。 |
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取って付けたようなグリップにセルフタイマーのスイッチが仕込まれている。エプロン部に見える押しボタンはAEロックボタン。 |
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右端の蓋が巻き戻しユニット取り付け穴。これを外すとフィルムのスプールが見える。 |
●露出制御
AV,TV,M,Pの各モードが選択できますが、モード切り替えのためのスイッチは特になく、シャッターダイヤルとレンズの絞りリングの組み合わせでモードを決定します。例えば、シャッターダイヤルを「A」にし、レンズの絞りリングを適当な位置にすれば絞り優先モード、絞りリングの白いボタンを押しながら最小絞りよりさらに回した位置(Canon
FDレンズでいうとAの位置)にセットするとプログラムモードになります。この状態でシャッターダイヤルをA以外の速度に合わせると、シャッター速度優先モードになります。
ただし、このカメラはクロスオーバーシステムという、ミノルタXDのサイバーネーションに似た機能を持っているため、例えば絞り優先モードでF5.6にしておいても、カメラが暗いと判断すると勝手に絞りを開けてしまいます(この時、クロスオーバーシステムが稼働していることを示す「゜」が絞り値の右に表示されます)。これがこのカメラの一番の特徴と言えると思います。この機能を殺すには、感度ダイヤルの横にあるクロスオーバースイッチを前にスライドさせ、「FIX」という文字が見えるようにします。これにより、通常の絞り優先・シャッター速度優先のAEとなります。
●シャッター速度
最高速は1/1000と平凡な数字ですが、最長はAE時で約22秒(ただしファインダー内表示は16秒まで)と、ZEに比べると圧倒的に長時間露光に強くなっています(今時のカメラから見れば全然たいしたことはありませんが)。また、マニュアルで設定できる秒時は8秒まであります(中間はつかえません)。使うか否かは別にしても、一つの特徴と言えるでしょう。
●露出補正
補正幅が±2段しかないカメラが多い中、±3段というのは立派でしょう。たまに3段ズラしたいことがあります。±2段しかない場合で3段の補正をしたい時は感度設定の方をいじれば用は足りますが、戻し忘れなどの不安もありますから、これはうれしい機能です。ただ、0の位置でロックがかかるのはいただけません。勝手に動かないようにとの配慮でしょうが、実際に使ってみると面倒です。
●多重露光機能
巻き上げレバーの下にスイッチがあり、これをスライドさせて巻き上げを始めると、シャッターはチャージされますがフィルムは送られず、多重露光が可能になります。ZEでも多重露光ができないわけではありませんが、カメラの機能としてはついていません。
●ファインダー内表示
下部に7セグメントLEDの表示があります。左がシャッター速度、右が絞り値です。その右にクロスオーバー稼働表示「゜」、さらにその右には、露出補正している時に「v」が表示されます。
シャッター速度と絞り値両方が表示されるのは絞り/シャッター速度優先の時で、プログラムモードにすると単純に「P」と表示されるだけです。もうちょっと違う方法があったんじゃないかと思いますが、カメラ任せのPモードだから余計なことは気にするな、ということなのかもしれません。マニュアルモード時は「M」と表示されるだけで、露出計機能はもとより、現在の設定値すらファインダー内で確認できなくなります。いくらなんでもこれは不親切でしょう。
プログラムモードでも、シャッター速度がある速度以下になる時は、シャッター速度が表示されるようになります。いわゆるカメラぶれ警告ですが、説明書ではレンズの焦点距離により4段階あり、ワイド〜60mmまでは1/30,〜140mmまでは1/80、〜300mmまでは1/200、300mm超は1/500以下のときに速度が表示されることになっています。しかし、所有する80-200ズームを取り付けても、1/30から表示されます。どちらが悪いのかわかりませんが、50mm以外のレンズはこのズームしか持っていないので(^_^;、確認のしようがありません。電気接点の接続がうまくいっていないか、レンズ側の断線だと思いますが。
また、ファインダー内の明るさに応じて、LEDの輝度も自動的に変わるそうです。これは気が利いていますね。
それから、レンズには半絞りのクリックがありますが、ファインダー内の表示は1絞りごとにしか変化しません。シャッター速度表示の変化も1段ごとです。かなりアバウトな表示です。
開放値3.5や3.8のレンズを付けると絞り値の表示は「4.0」となり、50/1.7を付けると「1.4」と表示されます。説明書を見ると、開放値3.5のレンズをつけても2.8と表示されたり、1.7をつけても2.0と表示されることもあるようです。単に表示だけの問題で撮影には影響ないのですが、この辺もかなりアバウトです。
専用フラッシュを接続した時には特別な表示が出るようですが、専用フラッシュを持っていないため確認できません。
●セルフタイマー
セルフタイマーは電子式です。グリップ部にスライドスイッチが仕込まれており、これをスライドさせて2/6/10秒の動作時間を設定することができます。2秒が選択できるのは、レリーズケーブル入手が事実上不可能な現在はありがたい機能です。
残念ながら、レリーズ時ミラーアップはしません。
●AEロック
エプロン部の上の方に押しボタンがありますが、これがAEメモリーボタンです。レリーズボタン半押し時にこのボタンを押すと、レリーズボタンを半押ししている間はAEロックされます。ZEでは、スイッチによりモード自体を変えてしまい、レリーズボタン半押し時点でAEロックされますが、ZE-Xでは考え方を変えています。まあ、考え方はどちらでも受け入れられるのですが、問題はAEロックボタンの位置です。私から見ると実に中途半端な位置と形状です。位置的には右手の中指で押すのが一番やりやすそうなのですが、実際にやってみると指先の背(爪側)で押すような感じになる上ボタンの荷重が強く、また出っ張っていないため、大変押しづらいのです。左手でやろうとすると右手と緩衝してこれまた押しにくい。これは、かなり手の小さい人が設計したに違いないと思わざるを得ません。私の手が大きいのも事実なんですが。
●アイピースシャッター
アイピースシャッターを内蔵しています。レバーは操作感も軽く、シャッターの真ん中に白丸があったりしてなかなかいい感じです。
●巻き戻しユニット
ZEシリーズにはワインダーが用意されていて、共通で使えたようですが、ZE-Xにはさらに専用の巻き戻しユニットが存在していたようです。底板のパトローネ側にはそのユニットを取り付けるための穴があり、通常はキャップがねじ込まれています。このキャップがないと、光がもろに内部に入るので、紛失厳禁です。
●電源
ZEでは電池(LR44/SR44)を4個使い、しかも特殊な電池ケースに入れてからボディに挿入する方式だったので電池ケースの破損や紛失が心配でしたが、ZE-Xでは電池が2個になり、しかも特別な電池ケースはなくなったので安心です。
使ってみて
基本的なデザインはZEとあまり変わらず、最上位?機種らしさはあまりありません。レリーズした後の振動などは非常にチープですし、巻き上げの感触もよくないし、AEロックボタンは押しにくいし。レンズ装着時の感触も重くていやになります(ZEもそうですが)。でも、何の欠点も見あたらないカメラを操作するより楽しいと思うのは、おかしいでしょうかね。
2003.11.13.
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