Yvarというレンズは、スイスのKernというメーカーが映画カメラ用に製作したものです。50mmあたりより短い焦点距離のレンズではSwitarという名前のレンズもあります。この名前は、Kernが唯一スティルカメラ用に作ったといわれるアルパ用のSwitar(Macro-Switar)でも有名ですが、スティルカメラの世界ではKernの知名度はかなり低いのに対し、映画の世界ではKernは
Angenieux, Kinoptikなどと並んで有名だそうです。
このレンズはCマウントと呼ばれる小さなねじマウントです。Cマウントはフランジバックがかなり短いため、135判カメラで使えるような改造をしようと思っても、75mm以下の焦点距離では無限を出すことができませんが、150mmですとその辺の制約はほとんどなくなります。あとはどうやってボディに固定するか、フォーカシングをどうするかだけです(これはこれでたいへんですが)。
通常は、ヘリコイドと分離したレンズヘッド部分をベローズに取り付ける方法を採りますが、ベローズではカメラの保持とかフォーカシングでやややりにくい場合も多いので、ここではもともとのヘリコイドを活用しています。マウント部分を少し切断するので、元に戻せない改造となり、批判の対象となる可能性もありますが、あえて実行しました。
カメラとの結合はVIXENから出ているTマウントアダプターを使用、レンズとアダプターの結合には会社でこっそり作ったスペーサーを使用しています。アダプターは各社のものが発売されていますから、お好みのカメラに装着することが可能です。
純正ヘリコイドですと最短距離が約4mであるため、ポートレートなどは撮りにくくなるのですが、そういう場合はスペーサーのねじを緩めてレンズを奥に押し込んで(ミラーに当たらない程度まで)固定します。こうすれば近くも撮影できるようになります。その代わりに遠くが撮影できなくなりますが、遠くを撮りたいときはまたもとに戻せばよいのです。面倒かもしれませんが、接近できないよりは遙かにましでしょう。
ちなみに、純正ヘリコイドを使わず、ベローズを使用した場合は右下の写真のようになります。ここで使用しているベローズはM42マウントなので、TマウントアダプターもM42マウント用です。アダプターとレンズの結合は薄いリングを挟んでねじ止めになっています。
ベローズ使用による改造は、これだけで無限から接写域まで対応できるので便利ですが、撮影時のカメラのホールディングがしにくいことがある(縦位置など)ため、本気で使いたい場合のためにヘリコイド活用を考えたわけです。 |