このカメラについて
1954年に発表された、VITO Bシリーズの基本となるモデルです。VITOシリーズでは最初の固定鏡胴で、前玉回転ぽい作りですが、実は回転ヘリコイドです。
このカメラの特徴は、できるだけコンパクトにしようとして苦心した跡があることです。通常のカメラですと、ロックを外せば裏蓋が開いてフィルムの交換ができますが、このカメラは最初にロックを外す(図1参照)とパトローネ室下の底板1/3くらいを占める底蓋が開き、裏蓋を開けることができる構造になっています。とは言っても、底蓋はばねで開きますので、特に意識する必要はありません。
こんな構造により、トップカバー上面の高さをVITO IIより約6mm低くすることが可能になっています。
また、VITO IIではフィルムゲートの両側にあったスプロケットとローラーについて、VITO
Bではローラーを廃止してスプロケットをフィルムゲート中央に移動したことと、裏蓋のロック機構を底蓋に移すことにより、VITO
IIに対して全幅を約10mm短くしています。さらに、VITO IIでは巻き止めの機能しか担っていなかったスプロケットが、VITO
Bではシャッターのチャージも担当しているためセルフコッキングとなり、実用性が向上しています。巻き上げレバーは巻き上げドラムの駆動のみを行っていて、巻き上げ量とレバーの回転角度は全く連動していませんので、フィルムが終わりに近づく頃には巻き上げ角はかなり小さくなります。
この構造は、分割巻き上げが可能になるという副産物を生み出しています。
そして、レリーズボタンの必要ストロークを確保した上で飛び出し量を少なくするため、ボタン周囲を凹ませるなどのアイディアが盛り込まれています。
巻き戻しの仕方は、巻き戻しノブの近くにあるギザギザのレバーを裏蓋側にスライドさせるとノブがポップアップし、同時にクラッチが解除されるので、そのまま巻き戻します(図2参照)。これは、フォクトレンダーの旗艦、ウルトラマティックにも採用されています。
フィルムカウンターは逆算式で、鏡胴の真上に被写体側に向かって付いています(図3参照)。正面から見ると文字の天地が逆に見えますが、撮影中に確認する時は逆さに見ることになりますので、正しく読みとれます。
セットは手動で、鏡胴下に出ているぎざぎざを動かしてセットします(図4参照)。
張り皮の部分に見える釘の頭のようなものは、吊り用の金具です。ローライやマミヤ67、ハッセルブラッドなどのストラップが使えますが、このポイントで吊るとレンズが上を向いてしまいます。おそらく、何らかのアクセサリーを装着した上で吊ればバランスが取れるようになっているのでしょうが、本当のところはわかりません。
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(図1)レバーを起こし、時計方向に回すと右のヒンジを支点に底蓋が開き、裏蓋を開けることができる。 |
(図2)左下に見えるぎざぎざを手前に引くと巻き戻しノブがポップアップする。 |
(図3)正面から見ると天地が逆だが、撮影中に見ると正しい向きに見える。 |
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(図4)カウンターは逆算式で手動セット。レンズ下にあるぎざぎざを回してセットする。 |
(図5)ブレブレ写真で申し訳ないが、ご覧のようによく光を反射する鏡胴内部である。洗濯板処理してある手前側と比べると、差は歴然としている。 |
(図6)またもブレブレ写真で申し訳ないが、反射防止策を施してみた。洗濯板と同程度の反射に抑えられているようだ。この実写結果は近くご報告したい。 |
写りは
このカメラにもカラースコパー50/3.5がついています。50/2.8がついているタイプもあります。シャッターにもバリエーションがあり、このカメラにはスローが省略された普及型がついています。
レンズのスペックはVITO IIのレンズと同じですが、繰り出し方法やシャッター位置(IIはビトゥイーンシャッター、Bはビハインドシャッター)、鏡胴が蛇腹か固定かなどの違いがあるせいか、写りも傾向が違うような気がしますが、気のせいかもしれません。一ついえることは、コンパクト化を追求しているため内部の余裕がなく、逆光にはかなり弱いと思われます。鏡胴内側に艶消し塗装をしてあればまだかわいげもあるのですが、どちらかというとてかてかな塗装なので、ここはフォクトレンダーらしくないように思います(図5参照)。
かつてはいろいろなカラスコを撮り比べてみようと思ったことがありましたが、中断したままになっています。
2002年11月に、栃木県芳賀郡茂木町のツインリンクもてぎで行われた"Aerobatics
Japan Grand Prix"を見に行きました。そのときに撮った写真の一部が、標準党のサイトに掲載されています。このカメラで撮影した写真が3枚ありますが、党首のご厚意によりここからリンクさせて頂くことになりました。こちらをご覧ください。
2004.06.27.加筆、作例追加
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