このレンズ
このレンズはプロミネント専用の広角レンズです。プロミネントはレンズ交換式のレンズシャッター距離計連動式カメラで、ボディの方にシャッターおよび繰り出し機構を持っています。距離計は50mmレンズに合わせて作られているため、違う焦点距離のレンズを装着した場合には、普通であればレチナのように距離計で測距した数値を別の焦点距離用に読み替えてやる必要がありますが、プロミネントではそれが不要になる工夫がレンズ側に施されています。
このスコパロンの場合、ボディからの繰り出しをスチールボールと傾斜を使っていったん斜め方向の動きに変換し、それをまた光軸方向に変換することで50mmの繰り出し量を35mmの繰り出し量に変換します。右の図を見てください。
1. 外筒は爪でボディに固定されている
2. ボディの繰り出しが中筒に伝わる
3. 中筒の傾斜面で鉄球を斜めに押す
4. 鉄球が斜めに移動しながら内筒(=レンズ)を押す
比較的簡単な構造で繰り出し量の違いの問題を解決しているところは、さすがフォクトレンダーといったところですが、そのために外爪が必要になり、結果として大柄なレンズになっています。
使ってみて
ほとんどのレンズ交換式レンジファインダーカメラのように、レンズを替えても距離計でピント合わせができて、レチナのような読み替えが不要であるというのはたいしたものです。それは確かですが、レンズにヘリコイドを付けていればこんなに凝ったことをする必要はないわけで、出発地点ですでにおかしい、ということも確かです。これについてはVITO
IIIの流れから、基本構造を流用しながらレンズ交換ができるようにする必要があったためにこのような方法をとらざるを得なかったのであろうと推測できます。
プロミネントIとの組み合わせでは外付けファインダーを使う必要があります。ピント合わせはボディで行ない、フレーミングは外付けファインダーで行なうというのは、個人的には意外にめんどくさい作業だと思います。プロミネントIIとの組み合わせならそのあたりのめんどくささはありませんが、ファインダーの中で枠が大きすぎて全体を見渡すのに苦労すること、眼鏡をかけているとさらに困難になることが難点です。プロミネントはやはり50mmレンズを付けたときが一番使いやすいカメラです。と、当たり前の結論になりました。
写りは
開放でも絞っても、被写界深度が変わるだけで描写に大きな変化はありません。おもしろくないと言えばおもしろくないですね。開放でも十分シャープで周辺の減光もわからないくらいですが、絞ってもカリカリにはなりません。まあ、そういうレンズです。
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