S2

このカメラについて

 このカメラは、私がコンタックスのユーザーになったばかりの頃から見ていたカメラです。よく出入りしていたカメラ屋の中古棚に、いつも1台、2台並んでいたからです。目にするたびに手にとっては、その操作感にげんなりして棚に戻す、こんな事を繰り返していました。そのカメラが今、目の前にあります。何でこうなってしまったんでしょうね。

 これはコンタックスブランド唯一のメカニカルシャッター一眼レフです。S2というネーミングなのは、ご推察の通り過去にContax Sというカメラがあったからです。もちろん、これは京セラやヤシカが作っていたカメラではなく、第二次大戦後間もない1948年に(当時の)東ドイツのツァイスイコンが発表した、世界初のペンタプリズム搭載一眼レフカメラです。
 S2が初代Sと共通しているのはメカニカルシャッターであるというだけのことですが、まあ、なんというか、過去の輝きが名前だけでも後の時代に受け継がれていくのは悪いことではないでしょう。

 さて、このカメラですが、外装が京セラお得意のチタンでできているというのです。確かに、見て持ってなでてみるとなかなかいい感じです。個々の部品も丁寧に作ってあるようです。感度設定ダイヤルの外周に、ゴムのすべり止めが巻かれたりしていますよ。しかし、シャッターを切るべく巻き上げを始めると、違和感を感じます。外観に対して巻き上げの感触があまりにも安っぽいのです。強いコイルばねをねじっているような感触です。それをこらえて巻き上げを完了し、レリーズしてみますと、あまり品の良くない音と振動が伝わってきます。もう少し何とかならなかったのでしょうか。私かかつてこのカメラを手にとっては棚に戻していたのは、これが理由なのです。
 それがなぜ手元にあるのか? それは、ある人のS2bをいじらせてもらった時のこと。そのS2bは、記憶にあった巻き上げ感、レリーズ感とは全く違ったのです。どうもレンズを取り付けると感触が変わるようなのです。そういえば、かつて店でいじっていた時はレンズがついていませんでした。そんなことがあってから、S2が気になって仕方がなくなり、ついに購入に至ったというわけです。で、実際にレンズの有無で感触がどう変わるか試してみたのですが、わずかに変わるのが感じられる程度で、前述のS2bのようなまろやかさは残念ながら得られませんでした。でもまあ、実際に自分のものにしてみるとそれなりに愛着が出てくるものです。しばらくは手元に置いておくことになるでしょう。
 このカメラはどこぞのOEMだという噂があり、私もどちらかというとそんな感じを持っていますが(巻き上げやレリーズした時の感じがOM2000に似ているような気がするので、あの会社かな)、まあどうでもいいことでしょう。

使ってみて

 機能的には特別なものは一切ついていません。1/4000秒の最高シャッター速度がちょっと光っている程度でしょう。多重露光はできますが、分割巻き上げはできません。これに関してちょっとおもしろいのは、巻き上げを途中でやめた時のレバーの動きです。よくあるのはその位置で止まったままになるか、ばねでもどるけど再度巻き上げようとするとさっきとめたところまで空振りになる、というものですが、このカメラはレバーがぶらぶらになります。壊れてしまったような動きです。こんなところも中途半端なカメラです。
 さて、このカメラはスポット(スポットと言うには測光範囲が広いような気がしますが)露出計内蔵マニュアルカメラなので、通常はファインダー内の表示を見ながら露出を決定することになります。レリーズボタンを半押しすると、現在セットしてあるシャッター速度が点滅します。そして標準露出が得られるシャッター速度が点灯します。露出計をそのまま使うのであれば、シャッターダイヤルと絞りリングを動かして、点滅表示だけになるように調整します。しかし、ぴたっと合わせることが難しく、ちょっといらいらします。実際のアガリにはほとんど影響がないはずですが、気分的に納得いきません。この辺は不満に思う人が多かったようで、SSで中央重点測光への改造を受け付けてくれたり、S2bが出た背景になっているのでしょう。
 それから個人的に感じることですが、点滅というのはたいていの場合警告を意味するので、セットした速度が点滅するというのは混乱の元になるような気がします。実際に使っていて、時々わけがわからなくなりました。中央部重点測光への改造より、できるものならこちらの改造を受け付けて欲しいものです。