Retina Reflex (original)

このカメラについて

 レチナIIc,IIIcが発売され、レンズ(前群)を交換することで焦点距離を変えられるようになりましたが、距離計と連動しないことから大変使いにくいという批判が当時もあったのでしょう、3年後の1957年に同じ前群を使える一眼レフが発売されます。それがこのレチナレフレックス(#025)です。IIc, IIIcにヘリゴン付きとクセノン付きがあったのと同様、このカメラにも両方のタイプがありました。開放値については、IIcはF2.8, IIIcはF2でしたが、レフレックスはF2のものだけです。一眼レフであるということ以外、ほとんどレンジファィンダー機と同じ仕様になっています。

 使い方も、距離の読み替えをやる必要はなく、ファインダーで見たままが写る以外、変わりはありません。注意点としては、IIc, IIIcも共通なのですが、F5.6の前群をつけていても、ボディ側の絞りをF2に設定できてしまうことです。この場合は実際にはF5.6が開放になりますから、気がつかないとどアンダーの写真になってしまいます。取りつけた前群の開放値を常に意識している必要があります。

 また、クイックリターン式ミラーではないので、レリーズした後は再度フィルムを巻き上げるまでファインダーがブラックアウトしたままです。反面、このカメラが優れていると思う点は、ファインダースクリーンが素抜けではなく、スプリット+マットになっていることです。ライカフレックスにしろコンタレックスにしろ、最初のモデルでは真ん中以外はフレネルだけのスクリーンでした。

50mmの前群を外すにはロックレバーを押してやる必要があるが、その他の前群はロックレバーを押さなくても外すことができる。
フィルムカウンターと巻き上げの関係は、レンジファインダーレチナと全く同じである。このことを知らずにジャンクとしてオークションに出品されている機体があるが、裏をかいてホントのジャンクを無知のふりをして出品している可能性もあるので注意が必要だ。


 ファインダーの四隅はRになっていて、視野率もかなり低いようです。厳密なフレーミングは難しいかもしれません。で、レチナレフレックスのスプリットですが、単なる水平スプリットだけではなく、円周スプリットとでもいうのでしょうか、二重円の内側の円(境)もスプリットになっています(ただし12時付近と6時付近のみ)。合計3箇所のスプリットがあるわけです。個人的にはスプリット+マイクロプリズムより有効な場合が多いのではないかと感じています。

使ってみて

 安く入手できた代わり、あまり程度はよくなく、時々シャッター速度が不安定になります。非連動露出計も不動で、入手した時は露出計のダイヤルもついていませんでした。このままではあまりにも情けないので、ジャンクボディからダイヤルを移植して、体裁だけは整えました。それでも、交換前群を一眼レフで使うという当初の目的は果たせました。そしてわかったことは、レチナは50mmに限るということでした。

 
(これより加筆)その後、再び持ち出して撮影してみたのですが、やはり真っ白(ポジ)になるコマが散見されました。シャッター羽根が粘っているのかを確認したくて裏蓋を開けたまま何度もレリーズしていたら、原因が見えてきました。レリーズボタンをごくゆっくり下げていくと、ほぼ100%ミラーが上がってそのままになってしまうのです。シャッター羽根も開いたままですので、いわばバルブ状態です。ここでふと疑問が・・・。

 本来、レンズシャッター一眼レフカメラはレリーズすると一度シャッターが閉じて、そしてミラーが上がり、おもむろにシャッターが開いて設定された時間が経過後に再び閉じる、というシーケンスを実行するものと思っていましたが、このカメラはそうではないようです。そのとき頭に浮かんだ言葉が「ミラーシャッター」。

ミラーシャッターでインターネット検索すると、EXAシリーズとかFUJICAのST-Fなんかが引っかかりますが、レチナレフはひとつも引っかかりません。まあ、ミラーが先後幕両方の役目を担っている訳ではなく、ミラーが先幕、後幕がリーフシャッターとなるので、やはりミラーシャッターとは違う分類になるのでしょうね。いずれにしても、もともと一眼レフのことなんか考えられていないボディとシャッターを無理矢理SLRに仕立てているんですから、やむを得ないことなのでしょう。
ちなみに、デッケルマウントのレチナレフレックスは、ちゃんと上述のシーケンスをたどります。

 ということで、シャッター速度が不安定だったのは、実はフォーカルプレーンシャッターで言うところの先幕の役割を果たすミラーと、後幕の役割を担うリーフシャッターの連携がうまくいっていなかったためだということがわかりました。どこかで無理矢理修理してもらうという手もあるのでしょうが、ここは割り切って、カメラがぶれない程度に一気にレリーズボタンを押し込む使い方をすることにしましょう。
(加筆ここまで2003.07.19.)

写りは

 標準の50mmについては、やや黄色く写るものの立体感のある描写です。IIIcの50mmとはちょっと違う写りだと感じます。
35mm, 80mmの交換前群については、別項をご覧ください。

作例
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