このカメラについて
このモデルについての記述は、たいしたことは書いてありませんけども、ヘリゴン付きレチナIIのページを参照して頂きたいと思います。
このカメラは、レチナの修理販売では有名らしいアメリカの業者から買ったものです。当時、エクター付きのレチナはクセノン付きよりも割高だったのですが、クセノン付きよりも安い価格で入手できたので、さっそく試写に持ち出してみました。アガリを見てまず驚いたことに、写りを云々する以前に猛烈な光線漏れでコマの半分以上が素抜け状態。唖然としましたが、これだけひどいと原因の特定は逆に楽です。すぐに本体と蛇腹の接着部が広範囲に渡って剥がれていることがわかりました。で、そこを接着して乾燥後、再び試写に持ち出しました。
今度は光線漏れはなかったのですが、ピントがどうも合っていないようです。そこで、距離計の調整に取りかかりました。レチナIIの露出計調整は初めてでしたが、他のいくつかの機種で経験があったので、これもなんとかなるだろうという考えでした。実際、構造は他の機種と大差なく、調整の方法自体はすぐわかったのですが、どうしても合いません。無限を合わせると近距離が、近距離で合わせると無限が合わなくなってしまうのです。いい加減いやになって、かなり長い間放置されていました。
時々思い出しては「直さないと」と強迫観念に襲われていたのですが、最近VITESSAのレンズをAXにくっつけて使ったのを思い出し、「ボディがだめならレンズだけ取り出してAXにつけてやれば、露出もピント合わせも心配ないじゃん」と気づいたのです。そこでちょっと苦労してレンズを取り出し、167MTにあてがってみると、当然像は結びますがレリーズするとミラーと後玉が思い切り干渉してしまいました。カラースコパー50/3.5とは後玉の大きさが全然違うのです。これでは使えません。仕方なく、復旧を始めました。レンズ取り出しの過程でII型の構造がわかったのはけがの功名と言えるかもしれません。組み立て時はちょっと余裕があったので、動きの渋かったヘリコイドのグリスアップもやってやりました。
ここまでやって、ふと「どうせなら距離計調整も再トライしてみるか?」と思い立ち、まずフィルム面で無限遠が出ていることを確認後、距離計の調整に入りました。まず無限から合わせます。次に、その状態で最短付近にピントを合わせてみたら、なんと、フィルム面でもピントが合ってるじゃないですか。一応中間の距離でも確認してみると、これもほぼ合っています。狐につままれたような気分ですが、とにかく合っているみたいなので、各部のホコリを飛ばし、指紋をふき取ってトップカバーをかぶせました。購入以来、ようやくまともな撮影ができそうな状態になったわけです。
この機体は、その修理業者のサインがあちこちに書いてあったりシールが貼ってあったりするんですが、一体どこをCLAしたんでしょうねえ。まあ、シャッターだけは高速から低速までしっかりしているので、その点は評価できますけどね。
エクターというのは本家コダックのレンズ名称ですが、レンズ構成(焦点距離)や開放値などにつけられた名前ではなく、コダックが力を入れて作ったレンズにこの名前を付けたようです。日本ともドイツとも違う命名法ですね。
ちなみに、エクターのシリアルナンバーの頭にはアルファベット2文字がついていますが、これが製造年を表わしていることはよく知られています。CAMEROSITYが順番に1から0に当たるとされ、たとえば「EO」で始まる場合Eは4番目ですから4を、Oは6番目ですから6を表わしますので、製造年は1946年ということになるわけです。
写りは
開放からF2.8くらいまでは周辺(というか真ん中以外)は放射状に流れるような写りになることがあります。いつでもというわけではなくて、ピントを合わせたところの距離で変わるようです。ただし、その真ん中は開放とは思えないほどくっきりとシャープに写っています。なかなか特徴のある写りだと思います。F4では四隅が若干頼りない感じはありますが、F5.6まで絞ると全然問題なくなります。
しかし、Retina IIのような小さいファインダーで二重像を合わせるのがだいぶつらくなってきました。インターネットが常時接続になってから急激に視力が落ちたような気がします。何とか視力回復の道を探さないと、MFカメラを使えなくなってしまいます。
2003.04.15.
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