Prominent

 

このカメラ

 「プロミネント」という名前は、もともとは戦前のロールフィルムカメラに付けられたものです。戦前のプロミネントは光学式露出計を内蔵し、連動距離計、視度補正機構を装備するなど、当時としてはかなりハイスペックのカメラだったようです。
 そんな由緒ある名前をつけられて1951年に発売されたこの戦後のプロミネントは、戦前のプロミネントと区別するために「プロミネント35」などと呼ばれることもあります。

 プロミネント35にはバリエーションがいくつかあり、大きくはファインダーが小さいI型、等倍ファインダーのII型に分かれます。I型はアクセサリーシューもない最初期型、交換レンズ用の視野枠が追加された型、巻き上げノブにレバーがついた型などがあります。どれがどういう順番で採用されたのかについて記述がある資料は見たことがありません。手許にあるのは最初期型と最近入手したII型ですが、I型の小さなファインダーの中に確か3種類?の視野枠を持つものも見たことがあります。

 また、このカメラはフォクトレンダー製品の中で最も大口径のレンズ、Nokton 50/1.5が付く唯一のカメラであることは有名です。ノクトンは、フォクトレンダーの中では後にも先にもこのカメラにしか搭載されなかったので、ノクトンを使うためにこのカメラを買ったという人もいるでしょう。ちまたには少数ながらLマウントのノクトンが出回っているようですが、価格がやや現実離れしているきらいがあります。手元の資料によると、レクタレフレックスというカメラ用にもノクトンが供給されていたようです。ただしこちらは一眼レフのため、バックフォーカスを稼ぐために一枚レンズがふえて、8枚構成になっているとのことです。
 今は昔の中古カメラブームで、このマウントをLマウントに変換するアダプターも発売されていたようで、これを使えばライカで使えるようになります。こちらの方が現実的でしょうか。ただし使えるのは50mmのレンズのみ(ノクトン、ウルトロン、カラースコパー)です。

I型とII型の違い

手元にあるI型とII型の比較をしてみました。

高さの違い。6mmほど高さが違う。6mmという数字は、カメラの寸法としては大きいものだと思うが、並べてみるとこんなもん?という程度の違い。 上がI、下がII型。平らな場所に置いたとき、I型は円錐形の部品2個+エプロン部底(リベットなし)に対し、II型は小さな突起X2+エプロン部底のリベットで支えている。 手前がII型である。II型は巻き上げノブにレバーがついている。レリーズボタン、巻き戻しボタンの高さが高くなっているが、ストロークは同じようだ。
I型のファインダーを撮影してみた。II型と倍率を比較するため、トリミングをしてない。まつげを接眼部に押しつけるようにしないと全体が見渡せないから、眼鏡着用では使えない。
しかし、ちゃんと清掃してあれば二重像の分離は良いので、ピント合わせは問題ない。
II型のファインダー。ピンク枠が50mmのフレームである。眼鏡着用でも50mm枠はすべて見渡せる。I型より圧倒的に見やすいが、余計なフレームが目障りだ。 II型ファインダーの拡大画像。一番外側(白四角)が35mm、内側へ順に50mm, 100mm,150mm用の枠。50mm以外のレンズを使うときに外付けファインダーが要らないのは利点だが、やっぱり余分なフレームは邪魔だ。
左上がI型の裏蓋合わせ部、左下は裏蓋付け根部分。右はII型の同じ部分。II型はテレンプが貼ってあり、遮光対策がなされている。I型を使っていて光線漏れのトラブルは一度もなかったが、市場ではそんな不具合が出たのだろうか。

ゴミを取ってから撮影すれば良かった。

使ってみて

 このカメラはフォクトレンダーらしさが満載です。まず、レンズ交換式カメラなのですが、レンズにヘリコイドがありません。ボディ側にピント合わせ機構が組み込まれています。向かって右のノブがフォーカシングノブで、これを回すとレンズマウント含むシャッターユニット部分が前進・後退するのです。左が巻き上げノブになります。ですから、普通のカメラのように左手の位置がカメラの下側に来ることはなく、ボディを両側からわしづかみにする形がこのカメラの正しい持ち方ということになります。
 私は左目でファインダーを覗きますので、わしづかみだと右手と顔がちょっと重なりますが、大きな問題はないと感じています。しかし、右目でファインダーを見る人の中でもピント合わせをしにくいと感じる人がいたり、全然感じないという人もいるようで、感じ方は千差万別ですね。

 フォーカシングノブの回転角度と距離計二重像の動きと繰り出し量の関係は、ノクトン、ウルトロンなどの標準レンズが基準となっています。固定鏡胴のカメラであればなんの問題もありませんが、このカメラはレンズ交換式です。広角や望遠レンズをつけた場合はどうやって距離計に連動させるのでしょうか? これがプロミネントの最大の特徴といえるかもしれません。この辺については、後日スコパロンのページで書いてみたいと思います。

だから?

 凝っているから価値があるわけではないし、これが写真を撮ることに対してメリットを生み出しているかというと、そうではありませんが、そんなところがフォクトレンダーらしさと言われる部分であり、ファンの心をとらえて離さない魅力なのでしょう。

2005.05.18.大幅変更