Rodenstock Retina-Heligon C f:5,6/35mm

このレンズについて

 ライカよりも大幅に安価で、作りも写りも良いレチナでしたが、レンズは交換できませんでした。当時、レンズ交換をしたいという市場の要求がどれくらいあったのかわかりませんが、ついにIIc/IIIcシリーズでレンズ交換ができるようになりました。レンズと言っても普通の一眼レフのようにレンズ丸ごと交換ではなく、絞りから前の部分、前群だけを交換する方式です。この方式は、Zeiss IkonのContaflexシリーズ(途中から)やRolleiflex SL26などでも採用されていますが、後群が標準レンズのものなので設計に無理があるのか、かなり大きな前群になります。

 この35mmは、明るさを犠牲にする代わり、かなりコンパクトなサイズに収まっています。直径は50mm標準とほとんど同じですが、全長が長くなっているため、これをつけたまま蓋を閉じることはできません。

 この前群は、Rodenstock Heligonが装着されたレンジファインダーのレチナIIc/IIIc/IIC/IIICとレチナレフレックス(オリジナル)に装着が可能です。いずれの場合も開放値がf5.6となることに注意が必要です。レチナレフレックスではそれに注意すれば問題なく使えますが、レチナに装着する場合はさらにちょっとややこしい操作が必要になります。ここでは、その操作についてちょっと触れてみます。

レチナIIIcに取り付けてみたところ。直径は標準50mm前群と同じくらいですが、全長がちょっと長くなります。このまま蓋を閉じることはできません。
直径がほぼ同じで50mmより長くなることから、50mm用のフードが35mmにもそのまま使え、蹴られることもありません。偶然ではないと思います。
さて、何がややこしいのかを説明しましょう。
まず、ファインダーを覗いて、ピントを合わせたいところに合わせます。右の例では、12ftのところにピントを合わせました。
そうしたら、カメラをひっくり返してみましょう。赤い矢印のところに▽の指標が見えます。ここに先ほどピントを合わせた距離を合わせます。今のままでは、6ftちょっとのところにピントが合ってしまっています。50mmと35mmでは、ピント面と繰り出し量の関係が異なるからです。
目盛りの12を▽マークに合わせます。これで12ftのところにピントが合いますので、外付けファインダーの35mm枠を使ってフレーミングし、レリーズします。こんな事をやっているうちに、動く被写体はとっくにどこかへ行ってしまいます。

目盛りぴったりのところに合わせる場合はまだいいのですが、目盛りの中間位置になった場合、読み替え誤差が発生しますのでピント精度も誤差が大きくなります。まあ、35mmのf5.6ではさほど問題ないと思いますが・・・

使ってみて

 上記の説明文に書いた通り、レチナIIc/IIIcで使う場合には大きな制約があり、遊びでやってみるにしてもすぐに飽きてしまいます。蛇腹レチナには、俗に「大窓」と呼ばれるタイプ(IIC/IIIC)がありますが、この機種を使う場合は外付けファインダーが不要になるメリットはあるものの、距離の読み替えは必須です。やはり、この交換前群はレチナレフレックスで使うべきでしょう。開放値が暗いので、スプリットイメージが翳りやすいという弱点はありますが、見たままが写るのは大きな利点です。

写りは

 開放値が暗いだけあって、開放でもよく写ります(この表現は適切でないような気がしますね・・・少なくとも後群は絞って使っているわけですから)。ハイライトが飛び気味のような気がしないでもないですが、メリハリのあるうつりでスナップにはいい感じです。

2003.07.12.

作例