このカメラについて
1950〜60年代当時、世界最大のカメラメーカーであったドイツのツァイスイコンが、総力を挙げて開発したと言われている高級一眼レフカメラがコンタレックスシリーズです。写真のモデルはその先頭バッターとして1958年に登場しました。世界で初めて露出計と絞りが連動した35mm
SLRだそうですが、その他のスペックは特筆する点はありません。
ただ、コンタレックスの「レックス」なるゆえんは、単に数字上のスペックでは表せない存在感、精密感、そしてカールツァイスがこのカメラのためだけに作った交換レンズ群にあるのではないでしょうか。実際に手に持ってみると、それがよくわかると思います。加えて豊富なアクセサリー群により広範囲な撮影条件に対応できるシステム性も魅力でした(最初は交換レンズとフィルター、フード、ベローズ程度でしたが)。過去形なのは、現在入手できるアクセサリー類も高価で、実用システムとして使用することは困難だろうと思うからです。
使ってみて
●このI型は数多く出回っているためか、何台かの個体を操作する機会がありましたが、巻き上げレバーの重さが頼りないほど軽いものから、どこか引っかかっているのかと思うくらい重いものがありました。その原因が整備不良なのか、個体差なのか、私にはわからないのですが、有名なある修理屋さんによると、そんなものらしいです(^_^;
●このカメラは、巻き上げレバー、レリーズボタン、フィルム感度ダイヤル、シャッター速度ダイヤル、フィルムカウンターがすべて同軸になっており、デザインに貢献しています(と思います)。一方、同軸にしたためレリーズボタンの位置が外寄りとなり、指先で押すには少々やりづらく、ブレの原因にもなります。そこで、人差し指第一関節の腹側でボタンを押すのがよいでしょう。
●このカメラの露出計は感度範囲が狭いため、フィルム感度によっては選択できないシャッター速度がでてきます。たとえば、フィルム感度をASA12にすると、スローは1秒まで(バルブが使えない)となり、ASA400にセットすると1/30が一番遅い速度になります。さらに遅い速度が必要なときは、フィルム感度をいじらなければなりません。これは、露出計の測光範囲外での撮影を防止するための親切(?)設計で、露出計に頼って撮影する場合はよいのですが、事実上露出計は頼りにならないため、今となってはじゃまでしかない機能と言えます。その他露出計に関しては、穴がたくさん明いた板を取り外すと見かけの感度が16倍となり、非常に暗いところでの撮影に使えるという機能も持っています。
●このカメラ、アイレットがほぼ真横についています。ですから、ボディのみで吊り下げますとだいたい正立するのですが、小さなレンズ、P50/2またはD35/4をつけるだけで大きくお辞儀してしまいます。首から下げて歩いていると、結構じゃまです。なんで斜め前につけてくれなかったんでしょうね。
●現代カメラは裏蓋が横開きですが、このカメラは下に引き抜くタイプですので、三脚使用時には本来ならば一度三脚から外して交換しなければなりません。しかし、本体を三脚に取り付けたままフィルム交換をするためのアクセサリーが存在します。と言うか、三脚に取り付けるにはこのアクセサリーを使うことを前提に設計されているようです。耐振動性の点ではかなり不利だと思いますが、これを使わないとしっかり三脚に締め付けられない(使えないことはない)のです。(写真下)
   
その他
おもしろいアクセサリーの一つに、交換式裏蓋があります。普通のカメラは、フィルムを一度装填したら途中で入れ替えることはできませんが、このアクセサリーを使うとカラーネガから白黒、そしてリバーサルへ、自由にフィルムを途中入れ替えすることが可能になります。もちろん、フィルムの数だけ裏蓋が必要になりますが。
フィルムカウンターも内蔵していますので、最初にちゃんとセットしておけば何度入れ替えをやっても残り枚数がわかるようになっています。
ただし、からくり箱のような交換手順が要求されるので、慣れないと使いにくいこと、どうしても光線漏れが起こるものがあるなど、あまりお奨めのアクセサリーではありません。
2002.01.06.
|