このカメラについて
初代のアルパレフレックスやシネカメラのボレックスを設計したことで有名なヤコブ(ジャック)ボルスキーが、アメリカに渡ってから設計したカメラです。ボルスキーさんが設計したという名残は、アルミを磨いた上にクリア塗装したという外観デザインあたりに残っているような気がします。
B2の前身、モデルBが発売されたのが1947年頃で、このB2は1949年頃の発売と言われています。
このカメラの特徴はいくつかありますが、まずはシャッターです。このカメラに採用されているシャッターはエバーセット式と呼ばれるもので、シャッターチャージという操作をする必要がありません。厳密に言えば、シャッターチャージが不要というわけではなくて、簡単な構造ゆえシャッター機構単独でチャージまでやってしまうということだと思います。簡単な構造とはいえ、スローは1/10秒までですので、高感度フィルムを入れれば街の夕景などは撮れますね。シャッター速度は、T,
B, 1/10, 1/25, 1/50, 1/100, 1/200、絞りは3.2, 4, 5.6, 8, 11, 16, 22です。
ただし、ばねを弾くような構造のためか、非常にぶれやすいのが欠点です。かなりしっかりホールドしたつもりでもレリーズ時にカメラが動くのがわかります。そんなときは、アガリも間違いなくぶれています。
次の特徴は、多重露光防止機構です。エバーセット式シャッターは、レバーが元の位置にもどれば次のレリーズの準備ができていますので、何度でも露光することができます。このカメラは多重露光を防止するため、レリーズレバーの原位置の手前のところにストッパーピンを出して、レバーが原位置に戻り切るのをとめる方法をとっています。フィルムを巻き上げる時にストッパーピンがだんだん引っ込んでいって、レバーが原位置に戻って撮影可能状態になる、という構造です。
そして、巻き上げです。このカメラは自動巻き止めですが、その解除は巻き上げノブを少し持ち上げて回すことで行ないます。ノブ上面には「LIFT
SLIGHTLY AND WIND」と書いてありますので、英語圏の人間なら問題ないでしょう。が、日本人はわからない人が多いでしょうね。よくある自動巻き止め解除はボタンやレバーですし、このノブを持ち上げるための力もけっこう必要ですから、なおさらです。
巻き止めのストッパーが外れたら、持ち上げたままにする必要はありません。そのままノブを矢印の方向に止まるまで回せば良いのです。その過程で多重露光防止のピンが引っ込んでいき、ノブ下のフィルムカウンターが回転します。カウンターは順算式です。
ちなみに、巻き戻しについては巻き戻しノブを回すだけでよく、どこかのボタンを押すなどの操作は不要です。
そして、なんと連動距離計がついています。ただ、二重像合致式ではなく、上下像結合式とでもいいますか、要するにスプリットイメージみたいなものです。この方法は全反射ミラー2枚だけを使い、プリズムなどは使っていませんので、コストやメンテの点で有利なのでしょうね。距離計はバルナックライカのようにビューファインダーとは別の窓になっていますので、距離を合わせたあとはもう一つの覗き窓でフレーミングします。
レンズは、WOLLENSAKの44MM f/3.2 ANASTIGMATがついています。
使ってみて
●磨いたアルミにクリア塗装は、程度が良ければとても上品ですね。ボディを上から見ると台形をしていて、置物としてもよいものです。台形のボディは、Ihageeのバレックスなどもありましたが、あちらはBolseyとは逆に斜辺が確か前側にあり、ホールディングしにくかったような記憶があります。実物がないので記憶だけで書いてますが・・・
●巻き止めストッパーの解除のために巻き上げノブを持ち上げてちょっと回すのですが、これが重くてやりにくく、指が痛くなるかもしれません。ストッパーが外れたあとは、巻き上げるだけで撮影可能になりますから、レチナのI
やIIなどを使うよりは楽だと言えます。
●フォーカシング自体は、全反射ミラーと実像の組み合わせではっきり見えますので楽です(精度は別にして)。しかし、ビューファインダーの視野率がかなり小さいようで、アガリには相当余分なものが写り込みますので注意が必要です。
●ここまでは問題ないのですが、レリーズになると大変です。とにかく、どうホールドしても5割以上はぶれるんです。どうしてもぶれさせたくなかったら三脚を使うしかありません。もう一つの方法としては、レリーズケーブルをつなぎ、左手だけでカメラを持ち、右手でレリーズする方法です。これですと、かなりブレは防げるようになります。ただ、はたから見ていると不気味でしょう。
写りは
真ん中は開放でもかなりシャープで、意外に写るという印象ですが、周囲の甘さというか流れみたいなものは、かなり絞っても残っているように思います。また、開放時の周辺の背景はぐるぐるっぽい感じです。色については変なクセもなく、自然な発色をしてくれるようです。
2003.05.11.
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